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    【解決事例】PTSD(外傷性ストレス障害)罹患で2級3号の後遺障害が認められた事例

    ○被害者

    女性、喫茶店経営者

     

    ○事故の状況

    軽貨物自動車を運転中、後方から追い越しをしようとした小型貨物自動車に衝突され、受傷。


    ○裁判までの経過

    ・事故時の傷病名は、頸椎捻挫、腹部・頭部打撲など。

    ・症状固定時の診断名は、頸髄損傷、外傷に起因するうつ状態。

    ・自賠責保険の認定は、後遺障害等級14級10号

    ・医療費、入院雑費、休業損害名目等で、合計1458万9571円が支払われた。

    ・被害者は、加害者と保険会社を相手に提訴。


    ○裁判での争点

    ①被害者の後遺障害はPTSDか?
    ②被害者の後遺障害は本件事故によるものか?(因果関係の有無)
    ③後遺障害等級は、何級か?
    ④被害者の心因的要因の影響の有無・程度(過失相殺の類推適用の有無、割合)


    ○裁判の特徴

    本件では、事故の軽微性に比較して、被害者の現症が重篤であったことから、大学病院勤務の2名の精神科医による鑑定が行われました。交通事故訴訟で、等級や労働能力喪失率認定のために、医学鑑定まで行われる数は、多くありません。


    本件は、事故と後遺障害発症との間の因果関係について疑問があり、且つ、後遺障害にあたる症状が医学的にどんな診断名にあたるのかも、事故との因果関係の有無・程度に関係することから、鑑定の申請が認められ、医学鑑定まで行われた事案として、特徴があります。 


    ○裁判所の判断

    裁判では、鑑定の結果、被害者の後遺障害は、混合性解離性(転換性)障害※にあたるとされ、2級3号の後遺障害(労働能力100%喪失)が認められました。但し、被害者の重篤な後遺障害は、経済的問題を含めた諸障害に対する被害者の対処・甘受の仕方という心因的要因が寄与していたと推認できるとの理由で、損害拡大に寄与した被害者の心因的要因を斟酌して、総損害額から4割弱の減額をするのが相当であるとされました。


    そして、既払い金を控除後の損害賠償金として、加害者に対しては、4441万円余り保険会社に対しては、2590万円の支払を認めました。

     

    ※混合性解離性(転換性)障害とは?

    精神疾患の分類のひとつで、一般に、過去の記憶、同一性と直接的感覚および身体運動のコントロールの間の正常な統合が部分的、あるいは完全に失われている状態

     

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    12級に該当する「頑固」な神経症状と評価されるためには、事故によって発生した症状であることを医学的に証明できるかどうかが分かれ目です。

     

    具体的には、受傷時の衝撃の程度や治療経過の他、画像や神経学検査の結果がポイントになります。


    むち打ち損傷を、厳密に分類すると、①頸椎捻挫型、②神経根症状型、③さらに脊髄型に分類できるといわれる場合があります(ただ、最後の脊髄型は、頸髄損傷として、むち打ち損傷の範疇ではないともいわれます)。


    頸椎捻挫型では、画像上、外傷性の異常がみられないのが普通なので(たとえ画像所見で椎間板の膨隆や、椎間板ヘルニアが認められても、年をとれば普通にある程度のものだとして、外傷性が否定される場合を含みます)、神経学的検査でも特に異常がなければ、12級の認定は難しいでしょう。

     

    画像上も神経学的にも異常所見に乏しい場合は、14級も難しいかもしれません。但し、自覚症状主体であっても、受傷状況や治療経過(入院の有無や通院の頻度・期間)によっては、14級の認定を受けられる場合があります。

     

    ところで、診断名は、単なる頸椎捻挫であっても、症状をみると、頸部痛の他、腕や手の知覚鈍麻(低下)や痺れがあり、神経の損傷が疑われる場合もあります。分類でいうと②のパターンです。

     

    このような場合、画像所見で、頸椎や腰椎(頸や腰の骨)に椎間板ヘルニアや、後従靱帯骨化症、あるいは脊柱管の狭窄により脊髄神経が圧迫されやすい状態にあるといった異常所見が認められ、さらに、神経学的検査でも、画像所見に対応する異常が認められる場合があります。


    例えば、実際の裁判のケースでは、事故後、頸の後ろの痛みや、左上肢の痺れ、吐き気、左頸部の圧痛等を訴えたので、レントゲンやCT検査をしたところ、CTで頸の4番目と5番目の頸椎に頸椎椎間板ヘルニアが認められ、さらに、ジャクソンテスト陽性、ホフマン反射軽度陽性、上腕二頭筋反射正常、トレムナー軽度陽性であったという事案で、頸椎の椎間板ヘルニアによる神経根の圧迫によるものとして症状を合理的に説明できるとして、12級が認定されたケースがあります。


    認定のポイントは、画像から神経圧迫の存在が考えられたことと、神経学的検査でも、当該神経の支配領域に沿った異常が認められたことです。これによって、症状が事故によって発症したことが医学的に証明されたため、12級の認定を得られたわけです。

     

    ※神経学的検査とは

    ここにいうジャクソンテスト(Jackson test)や、反射のテストが、神経学的検査といわれるものです。末梢の神経障害が問題となるケースでは、スパーリングテスト(Spurling test)、MMTによる筋力検査や握力検査もポピュラーな検査といえます。


    例としてあげた裁判例のようなケースが、12級の典型例といえますが、実際には、画像所見で明かな異常が認められなくても、神経学的検査で異常があれば、治療経過などにも鑑みて、12級が認定される場合があります。

     

    なお、裁判所の等級認定と自賠責保険における等級認定とは若干違っているというのが実感です。自賠責保険では、画像上の異常が認められても、加齢性の既往で事故によるものではないとの理由で12級が認定されない傾向があるように思われます。

     

    しかし、裁判では、既往であっても、事故後に症状が発症したといえれば事故との因果関係が認められ、12級が認定される傾向にあると思います(但し、既往の疾患の存在を理由に減額される場合がありますし、自賠責保険の認定で14級や非該当であったものを裁判で12級と認めて貰うには、通院先医療機関のカルテを取り寄せて、解析することはもとより、X線、MRI、CTといった画像所見や神経学的検査所見に基づいた医師の意見書を証拠として提出するといった証明活動が必須で、大変な労力と時間を要することになります)。

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    頸椎捻挫の傷害名で14級の後遺障害が残り、東京地裁に提訴したケースがあります。

     

    このようなケースは、死亡事案や重篤な後遺障害が問題となるケースとの比較では、軽微事案ですが、それでも想定外に長い時間がかかり大変でした。

     

    「解決実績」中でもご紹介しましたが、提訴から裁判上の和解で終了するまで1年かかりました。被害者側は当然、早期解決を希望しますし、裁判所も軽微事案であるため尋問を行わずに和解を成立させたかったようですが、相手の弁護士が、被害者を尋問してみないと和解には応じられないと強硬に反対したため、尋問まで行い、尚かつ尋問後の和解の席上でも、あれやこれやと釈明を求められたため、結果として1年かかってしまいました。

    こんなに掛かるなら和解を拒否して最初から判決を求めれば良かったと思いましたが(判決になれば事故後からの遅延損害金と弁護士費用も賠償金に加算されます)、被害者の方が、裁判官の勧告に従いたいと言って、和解で良いというので和解で終わりました。

     

    もっとも賠償金としては、示談交渉段階での提示額の5倍以上という賠償金を得られたこともあり、被害者の方からは感謝されました。

     

    このように、軽微事案であっても、場合によっては提訴までします。それは、任意の話し合い(示談交渉)では正当な賠償金が得られないケースで、その場合は、やらざるを得ないからです。

     

    むち打ち=示談ではない

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    上記のケースでは、被害者の方は、結婚直後で子供が生まれる時期に事故に遭い、加害者が不誠実だった上、加害者の保険会社から提示された賠償金が余りにも低額で、納得がいかないという怒りがありました。

     

    怒りに任せて提訴するのは良くありませんが、事案として、争点が多く、判断が難しい論点が含まれていたため、示談交渉では希望する賠償金が得られない事案でした。

     


    そのため、弁護士としても提訴の必要性を感じ、尚かつ、この人と一緒なら頑張れると思える信頼関係が成立していたため、訴訟代理の依頼を受けることにしました。
     

    提訴したのに賠償金が下がった?

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    示談より裁判を起こした方が賠償金が増額されるというのが、賠償問題の常識ですが、そうでないケースもある。と驚いたことがあります。被害者の方が、「セカンドオピニオンを貰いたい。」「その結果、先生に引き受けて貰えるのなら高裁から引き受けて貰いたい。」と言うので聞いた話が正にそうだったからです。

     

    被害者の方には既に他の弁護士さんが付いて地裁で判決が出る寸前の時期まできてましたので、私が代理人になることはあり得ませんが、それでも、被害者の方が余りにも意気消沈して相談にみえたので、色々お話は伺い、できる提案はさせて頂き、お帰り戴きました。

     

    それにしても、示談の段階で有利に話が進むのならば、先々の事を考えて示談を成立させる方が被害者保護になるケースは確かにある。と勉強になったケースでした。

    示談の段階では保険会社の担当者が窓口となっていたケースでも、裁判になれば必ず相手は弁護士を付けて入念な訴訟戦略を立てて、とことん自分に有利な主張を行います。加害者なのに酷いと思うのはこちらばかりで、訴訟になったからには、加害者側も、理屈を盾にして、被害者の請求は高額すぎる。これが正当な賠償額だと堂々と主張してくるものです。

    全ては、裁判の経験を踏まえて、裁判になったらどうなるかを示談段階から考えて行動し、最適な時期と金額で紛争を解決することが肝要です。

     

     

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