最近の交通事故相談で感じる事は、第一に、むち打ち症の方が多い事ですが、その他にも、バイク走行中に思わぬ事故に遭われる方が結構いらっしゃるということです。
バイク事故に特徴的なのは、被害が大きくなる事です。自動車と衝突して何㍍も飛ばされたり、道路の落下物にハンドルを取られて何㍍も先の街路樹に激突する場合もあります。
例えば、道路上に落下物があったり、道路が陥没したりしていた場合、四輪自動車は避けられても、バイクの場合には回避自体が難しいです。また、被害者が車内にいる四輪自動車の場合と違い、人体がバイクごと飛ばされる事もあり、被害は、圧倒的に甚大になります。
衝突時の衝撃によって、バイクが廃車になることも珍しくなく、物損もそれなりに甚大ですが、それ以上に、人身被害が深刻なケースが多いです。つまり怪我の内容は、骨折を伴うことが多く、死亡に至るケースも少なくありません。幸い傷が治ったとしても、醜状障害(身体や顔の傷)が残ったり、手術で骨を削って足が短くなったりして、手足に機能障害が残り、上位の後遺障害認定を受ける場合もあります。
治療も長引くのが通常で、通院だけで終わる場合は少いです。例えば、入院の上、骨折の手術を数回繰り返し、感染症の危険に見舞われる場合もあり、そんなケースでは、精神的苦痛に対する慰謝料は通常より増額されるべきでしょう。このように、四輪自動車の事故に比べ、入通院とも長引くケースが多くなる分、賠償金額も高くなる傾向にあります。
加えて、バイクに乗るのは若い方が多いため、後遺障害が残った場合は、その先の労働能力喪失期間が長いため、逸失利益が多くなる傾向もあります。
実際に扱った事例でも、被害者は、10代~30代前半に集中しています。勿論、後遺症が残らずに治癒するケースもあり、それがご本人やご家族にとっては最も良い事なのですが、不幸にも後遺障害が残った場合は、被害が甚大な分、元々の収入は低めであっても将来的な逸失利益が増える傾向にあります。
実際、若くして何らかの機能障害が残ると、年齢を重ねるに従って、健康な方に比べて足腰が弱くなりがちだったり、収入のみならず、日常生活にも大きな不自由が伴う事が予想されるので、将来の生活を考えれば、納得できる形で、正当な賠償金を得ておくべきといえるでしょう。
バイク事故での解決事例はこちら
>>>バイク走行中、前方交差点を右折中の自家用車と衝突、転倒。左寛骨臼骨折の傷害を負い、その後股関節の可動域制限に対し後遺障害等級12級が認定され、加害者の保険会社から示談金の提示を受けたが、弁護士依頼により、約1000万円増額した金額で早期に示談が成立した事例
>>>バイクと自動車との衝突事故。 被害者はバイクの転倒により右腕神経叢損傷の傷害を負い、5年後に症状固定し、 後遺障害の認定を受けたが、その後、弁護士依頼により、 後遺障害等級が変更され、 変更後の7級の後遺障害を前提に事故から6年後に示談が成立した事例
>>>バイク走行中横転し、全身打撲、頸部症候群、TFCC損傷等の傷害を負い、後遺障害等級12級を前提に示談が成立した事例
>>>バイク走行中、自動車と出会い頭衝突し,転倒。脳挫傷等の重篤な傷害を負った事例
>>>バイク事故で頚椎捻挫の障害を負った被害者が自主退職に追い込まれ、裁判で工学の賠償金が認められた事例
>>>バイク走行中の衝突事故-後遺障害6級の事例
>>>バイク同士の衝突事故で、過失割合と後遺障害逸失利益が問題となった事例
>>>後遺障害の認定結果に納得せず、異議申立をしてて併合7級の認定を得ることができた事例
事故によって、意識消失を伴う脳挫傷等の頭部外傷(頭部打撲)を負った場合、外傷自体の治療は終わっても、記憶力が事故前に比べて顕著に低下したり、怒り易くなった等の人格変化を来す場合があります。
症状は、軽度のものから、仕事が出来なくなる重症なものまで様々ですが、いずれにせよ、頭部外傷後、記憶力の低下や人格変化などの特異的な症状を来す場合があるので、頭部外傷(頭部打撲)のケースは、要注意です。
解決事例中で、事例1としてご紹介したケースは、当初の診断名は頭部打撲で、自賠責保険の後遺障害認定は最も低い14級に過ぎませんでしたが、最終的に裁判で2級の後遺障害が認定されました。このケースは平成13年以前のもので、当時はまだ自賠責保険において、いわゆる「脳外傷による高次脳機能障害」というカテゴリーがなかったため、外傷性の精神症状として14級が認定されるに止まったのですが、今でしたら、高次脳機能障害として、当初から自賠責保険で高位の後遺障害が認定されていたケースと思います。
つまり自賠責保険では、平成13年から、「脳外傷による高次脳機能障害」を疑わせる事案に対する審査体制を整えましたが、それ以前は、頭部外傷後に残存した精神症状については特別の審査体制はなく、多くの場合、外傷後の精神症状として一括りにされ、14級が認定されるに止まっていたわけです。
逆に言うと、それだけ事故との因果関係が分かりにくい症状といえるのでしょう。その証拠に、現在でも、「脳外傷による高次脳機能障害」が疑われるケースは、後遺障害の等級評価が難しいと言われています。医師が扱う領域の中でも、特に専門性の高い領域といわれていますので、我々法律家にとっては尚更、理解が難しい症状(病態)といえます。
私の経験上も、高次脳機能障害が疑われる被害者の方に接すると、軽傷の方だと1回や2回の面談では気付きません。面談の回数を重ね、家族の方からも事情を聴取してやっと、事故によって脳に何らかの異常を来しているようだと推測出来るようになります。
例えば、大きな会社で課長職に就いているような方の場合、面談時の会話からは、異常性に気付くことは殆ど出来ません。事故のときの記憶はないと言いながら、その他の事は分かりやすく丁寧に伝える事が出来るからです。しかし、その後、奥様に聞くと、事故後、家の鍵をかけ忘れる事が多くて困るとか、人混みでイライラして自制が聞かなくなるので恐いとか、大声を出すので子供が怯えるようになったなど、記憶力の低下や人格変化を来していることが分かります。
さて、問題は、このような外部からは分かりにくい症状を、どのように正確に伝え、正当な後遺障害認定を受けるかです。症状の存在と程度を正当に評価して貰うためには、客観的な検査所見や主治医の診断書類によって、事故後の変化を説明できなくてはなりません。それが弁護士の腕の見せ所なのでしょうが、その事が周知されつつあるためか、最近、認定を受ける前にご相談にみえる方が増えてきました。
上記のケースでは、当該被害者の方は、元々の能力が大変高かったので、普段の会話や、職場での行動をみているだけでは、障害の存在は分かりません。参考まで、高次脳機能障害に特徴的な障害を列挙すると次のようになります。
高次脳機能障害に特徴的な障害
①認知障害(記憶力・記銘力の低下)
②行動障害(複数の事を同時に処理できない)
③人格変化(易怒性、衝動性、自発性低下)
以上の特徴的な障害が分かりにくい場合であればあるだけ、弁護士としては、治療経過を慎重に辿りつつ、主治医の先生から話を伺ったり、被害者の症状を主治医の先生に伝えたり、必要と思われる検査をして貰ったり、専門医に紹介して貰ったりといった努力をする必要があります。
上記のケースでは、検査結果を見ても症状の程度が読みとれないため、知り合いの専門医の先生に、追加検査をして貰った上で、意見書を書いて戴きました。この方の認定結果はこれからですが、主治医や専門医の先生と連携しながら、相談にみえてから一年にわたり、以上のような努力を重ねています。
最後に皆様に伝えたいのは、私が以上のような努力を続けることが出来るのは、ご本人や奥様が私のことを大変信頼して下さり、誠実に報告や相談をして下さるからです。お互いの信頼関係がないと、高次脳機能障害が疑われるケースは、最後まで代理人を務めることは出来ません。
精神的な障害を抱えているため、ご本人とだけ連絡を取り合っていると、ご本人の期待感が大きくなりすぎたり、思わぬ誤解を生じたりして、最後まで代理を務めることができず辞任せざるを得ないケースもあります。ご家族には、特に熱心に対応して戴く必要があります。この点も、高次脳機能障害事案の特徴といえます。
体幹骨の変形障害とは鎖骨、胸骨、肋骨、肩甲骨、骨盤骨のいずれかが、交通事故により当該部位を骨折した場合に、骨がずれる(転位)により変形が生じることです。
この場合は「体幹骨に著しい変形を残すもの」として12級5号が該当する可能性が考えられます。
特に鎖骨骨折は交通事故で非常に多くみられ、変形を残す可能性も高いと考えられます。
また、腸骨を採取し骨移植に使用するケースがありますが、この場合も骨盤骨の変形として認定を受けられる可能性が出てきます。
変形障害にて後遺症害の申請をする場合、単にレントゲンで骨折が確認できているだけでは立証には不十分です。また、骨折部位によっても難易度は違ってきます。
適切な認定を受けるべく、医師の書く診断書やその他の資料など、自賠責の要件に沿ったものをを揃え、丁寧な申請をすることが重要です。その為には後遺障害の認定をサポートする専門家の助言を受けることをお勧めいたします。
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