【バイク事故判例⑳】直進バイクと右折車の衝突事故において、早回り右折をした右折車の過失と、速度超過のバイクの過失を比較衡量し、過失割合をバイク15、右折車85とした事例

(平成28年 4月14日大阪地裁判決/出典:自保ジャーナル 1977号49頁、ウエストロー・ジャパン)

関係車両

バイク(普通自動二輪車)vs普通乗用自動車

 

事故の状況

バイクは制限速度時速50キロメートルの道路を時速65キロメートルの速度で走行し、現場交差点に直進進入した。一方、自動車は、対面信号機が青色なのに右折矢印信号だと誤信して、時速約20キロメートルで右折を開始したが、その際、交差点の中心の相当手前の地点で右折を開始し、バイクに気付かないまま、自車の前部をバイク前部に衝突させ、バイクもろとも路上に転倒させた。

 

けが(傷害)

脳挫傷、右側頭骨骨折、硬膜外血腫、右頬骨骨折、右眼窩底骨折、右上顎骨骨折、胸部打撲傷、右大腿骨骨幹部開放骨折、左大腿骨内顆骨折

 

入院等の期間

①入院2ヶ月
②通院約2年9ヶ月

 

後遺障害

後遺障害等級併合8級(高次脳機能障害につき9級10号、頬部知覚鈍麻の症状につき12級13号、顔面部の線状瘢痕につき14級10号、複視症状につき13級2号)。自賠責保険の認定どおり。

 

判決のポイント

裁判所は、バイク側・自動車側それぞれに不利な要素を次のとおり指摘して、過失割合を認定した。すなわち、被告(自動車側)は、対面信号機が青色表示なのに右折矢印信号を表示しているものと誤信し、対向直進車はないものと軽信して漫然と右折進行した。

 

また、交差点の中心の内側を進行して右折すべき注意義務があるのに(道路交通法34条2項)、交差点の中心の相当手前で右折を開始しており、早回り右折をしたものと評価できるから、この点を過失割合につき被告に不利な要素として考慮する。

 

他方、原告(バイク側)は、少なくとも時速15キロメートルの速度超過の状態で交差点に進入しているから、この点を過失割合につき原告に不利な要素として考慮する。

 

小林のコメント

「早回り右折」について、道路交通法は、「右折するときは、あらかじめその前からできる限り道路の中央に寄り、かつ、交差点の中心の直近の内側(道路標識等により通行すべき部分が指定されているときは、その指定された部分)を徐行しなければならない。」(同法34条2項)と規定し、「早回り右折」を禁止しています。ここから分かるように、「早回り右折」とは、右折車が交差点の中心直近内側に寄らないで早回りに右折した場合をいいます。

 

このように早回り右折は、道路交通法上も禁止される危険な右折方法であるため、裁判では、過失の認定において、右折車の過失割合を加重する要素とされます。

 

本件でも、右折自動車に早回り右折があったため、この点も自動車側の過失として考慮され、その結果、双方の過失割合は、バイク15、自動車85と認定されました。

 

(令和5年2月8日鹿児島地裁判決/出典:自保ジャーナル2151号32頁等)

関係車両

バイク(普通自動二輪車)、四輪車(普通乗用自動車)

 

事故の概要

乗用車は、直進して右折レーンに進入しようと、先行するバイクを右側から追い越そうとしたが、バイクも右折予定で、同一車線内を左側から右側へ寄ってきたため、バイクの右側面が乗用車の左側面後方に衝突した。

 

けが(傷害)

右多発肋骨骨折、右鎖骨粉砕骨折、右肩甲骨骨折、血胸、右母趾末節骨開放骨折、左母指中手骨粉砕骨折、両手右膝右肘挫創

 

治療期間

入院72日、通院22ヶ月弱

 

後遺障害等級

自賠責保険の認定は、併合11級(①右鎖骨粉砕骨折後の右鎖骨の変形障害につき12級5号、②右肩甲骨骨折後の右肩関節の機能障害につき12級6号)

 

判決のポイント

①過失割合

裁判所は、衝突箇所からみて乗用車が追い越しを開始した後にバイクが右側へ進路変更したと考えられるとし、その点からするとバイクの過失が大きいともいえるが、他方で、乗用車にとっては、バイクが右折のために同一車線内で進路を変更する事態も予想され得るので、このことも考慮して、双方の過失割合は5対5とするのが相当であると述べました。

 

②後遺障害等級

自賠責保険では右肩関節の機能障害に対し12級6号の後遺障害等級が認定されましたが、裁判では、この点が争点となりました。

 

後遺障害診断書では、右肩の可動域(屈曲=前方挙上、外転=側方挙上、伸展=後方挙上)の測定値は、健側(左肩)の3/4以下になっているので、12級6号の後遺障害に該当します。

 

しかし、裁判所は、同時期に通院先の医療機関で測定された右肩の可動域(屈曲や外転)は、概ね他動で140度ないし165度で、両肩が測定された場合には両肩とも同じ数字になっているのに対し、後遺障害診断書作成のための診察時のみ右肩の数値が80度ないし75度と著しく低くなっており不自然であるとの理由から、後遺障害診断書の測定値に信用性を認めず、右肩の機能障害の後遺障害を否定しました。

 

小林のコメント

裁判では右肩関節の後遺障害が否定されたため、後遺障害等級としては自賠責保険で認定された併合11級ではなく、12級(右鎖骨変形だけ)となりましたが、それでも物損を含む損害として合計998万余りが認定されました。

 

ただし、5割という大幅な過失相殺の結果、既払金451万円を控除後の金額として判決で認められた賠償金は53万円余りに止まりました。

 

【2024年3月27日更新】
執筆者:渋谷シエル法律事務所 弁護士小林ゆか

 

(平成23 年5月27日名古屋地裁判決/出典:交民 44巻3号678頁等)

関係車両

バイク(普通自動二輪車)vsトラック(事業用普通貨物自動車)

 

事故の状況

第2車線を走行していたバイクが、他の車を避けるため、第1車線に車線変更しようとしたところ、第1車線に違法駐車していたトラックに衝突した。

 

けが(傷害)

外傷性血気胸、第5・6胸椎破裂骨折、外傷性くも膜下出血等

 

入院等の期間

①入院1年1ヶ月(382日)
②通院1年7ヶ月(実日数は16日)

後遺障害

両下肢麻痺に対して2級(随時介護を要する)

 

過失の割合

バイク90%、乗用車10%

 

判決のポイント

①過失割合(過失相殺)

トラックは違法駐車により第1車線の進路を妨害していたが、被害者は第2車線から第1車線に変更するにあたり、第1車線を十分確認しなかったことから、過失割合は被害者の過失が大きいとして、過失割合を、バイク9対トラック1とした。

 

②慰謝料(本人と近親者の後遺障害分)

(1)本人分 2500万円
(2)父親分 200万円
本件事故により、子に後遺障害2級の後遺症が残り、随時介護が必要であるとして父親の慰謝料額を200万円と認定した。
(3)母親分 300万円
主に介護するのは母親であるとして、母親の慰謝料額を300万円と認定した。
<注>金額は、いずれも過失相殺前のもの

 

小林のコメント

裁判になる以前の段階で、被害者には既に自賠責保険金3294万が支払われていました。

 

判決では、被害者の過失が9割とされたため、本来の賠償金から9割減額された金額しか認められず、そのため、既に3千万以上の支払いを受けていた被害者には損害がないとして、請求は認められず(つまり被害者の請求は棄却)、母親と父親にのみ、それぞれ22万円と33万円の支払(弁護士費用を含む9割減額後の金額)が認められました。

 

 

 

お気軽にお問合せ下さいませ

ImgTop5.jpg
●ホーム ●弁護士紹介 ●事務所紹介 ●アクセス ●弁護士費用
 
トップへ