医療裁判経験からの高度なノウハウ
①医療裁判と交通事故
弁護士になって約10年間、交通事故の他に医療裁判も集中的に担当していました。
医療と交通事故は重なる部分が多く、相乗効果で、色々な事を学べました。
(私が思う共通点)
第1に、いずれの事件でも裁判になると、カルテ(診療録)の証拠提出は必須です。
第2に、交通事故の裁判では、事故と後遺障害の因果関係や、後遺障害の程度(等級は何級が相当か)が争点となることがありますが、後遺障害の内容や程度については、医療の知識が不可欠です。つまり、後遺障害が問題となる交通事故裁判は医療裁判に似てきます。
第3に、裁判は証拠主義なので、交通事故で上記の後遺障害の点が争点になると、医師の意見書(私的鑑定書)が証拠提出されることが多く、重篤な後遺障害が問題となる事案では特に、医師との連携は不可欠です。
(私が思う相違点)
一方、異なる点は、
第1に、医療裁判の場合には、医療水準論や、患者の期待権の侵害理論など、医療裁判に特有の、難しい法的理論が存在する点でしょうか。
第2に、裁判に提出するカルテや医学文献の量は、圧倒的に医療裁判の方が多いです。特に、複数の診療科にわたり医師の過失が問題になる事案では、カルテは診療科ごとに膨大になり、尚かつ裁判所に提出する医学文献も膨大な量になります。ということは必然的に、医療裁判に費やす弁護士の仕事時間も膨大になります。これは交通事故裁判の比ではないと言って良いでしょう。
このような点を踏まえて、我々弁護士の間では、医療裁判は専門性が高く、尚かつ通常の事件の3倍は手間暇がかかる。とか、通常事件でいうと3件分だ。と言われることがあります。
②医療裁判は時間がかかる。
医療裁判を長年担当してきた経験から言いますと、医療裁判は一般に、大変な時間がかかります。裁判自体に5年程度かかったケースは数件あります。裁判も、地裁→高裁→最高裁と三審制の中、どこまでやるかで違ってきますが、多くは高裁止まりで、それも高裁では裁判長の強力な和解勧告によって、裁判上の和解で終了するケースが多かったです。
ただ、通常いきなり裁判になることはなく、一般には裁判外の話し合い(示談交渉)→裁判所の調停やADR→裁判所に訴訟提起(あるいは応訴)という流れになるので、当初の話し合い(示談交渉)の時点から起算すると、裁判終了まで5年以上かかるケースもありました。
それに比べると(あくまで比較の問題ですが)、交通事故裁判は一般には、医療裁判ほど長期化するおそれは少ないように思います。また、依頼者や関係者との打ち合わせに割かれる時間も全く違います。医療裁判では、医師の先生との打ち合わせは夜に集中し、長時間に及びますが、交通事故では、そこまでの事態は滅多にありません。
③医療裁判の経験を踏まえて
交通事故の被害者の方の多くは、車両損害とともに人身被害にも遭われており、そのため自分(あるいは家族)の身体がこの先どうなってしまうのか大変な不安の中、加害者との示談交渉や裁判に対応しなくてはならず、経済的な負担はもとより、心的なストレスは計り知れません。
当事務所では、医療裁判の経験を通じて得た医療知識や人脈を生かして、紛争解決に取り組んでいます。
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