【バイク事故判例⑲】バイクで直進中、路外の車庫に進入しようとした右折車と衝突し、右腕を骨折し変形障害(後遺障害12級)が残ったケース
(令和 2年 6月15日東京地裁判決/出典:交民 53巻3号676頁等)
関係車両
バイク(大型自動二輪車)vs大型乗用自動車(バス)
事故の状況
バス(路線バス)は、片側二車線道路を進行し、右方の路外にある車庫に入ろうとして右折したところ、対向車線の第2車線を直進してきたバイクの前部がバスの左側面後部と衝突した。バイクは制限速度を少なくとも30キロを超える速度で走行していた。
けが(傷害)
右橈骨遠位端骨折、右尺骨茎状突起骨折
入院等の期間
①入院6日
②通院約1年1ヶ月
後遺障害
右尺骨茎状突起骨折後の変形障害(自賠法施行令別表第二12級8号「長管骨に変形を残すもの」)
過失の割合
バイク40%、バス60%
判決のポイント
①過失割合
バイク側は、本件事故は専らバス運転手の前方不注視によって発生したと主張しましたが、裁判所は、次の理由により、バイク運転者にも4割の過失があると認定しました。
「本件事故直前の原告二輪車が制限速度を少なくとも30kmを超える速度で走行していたと考えられること、本件道路に印象されたブレーキ痕の長さや位置からすれば、原告は、右折待ちをしている被告バスを認めてからある程度走行した後に急制動の措置を講じたと認められること、衝突時には被告バスの右折が完了していたことからすれば、本件事故の発生に原告の過失が相当程度寄与しているといわざるを得ず、他方、被告バスが車長の長い大型車で右折に時間を要することなどの事情を総合考慮すると、両者の過失割合は,原告40被告Y1・60とするのが相当である。」
②後遺障害逸失利益
バス側は、バイク運転者の後遺障害について、尺骨茎状突起骨の変形は労働能力に影響しない、仕事に影響はなく収入の減額もないとの理由で、逸失利益はないと主張しましたが、裁判所は、被害バイクの運転者について「水道局において施設の維持管理業務等を行っており、骨折後の右手関節痛や力が入らないなど、業務に支障が生じ、作業効率が低下しているところを本人の努力や工夫で対応していること、将来の昇進、昇級、転職等に影響が出る可能性は否定できないことから、症状固定日から67歳までの19年間(ライプニッツ係数12.0853)、5%の労働能力の喪失を認めるのが相当である。」と述べ、約500万円の逸失利益を認めました。
小林のコメント
過失割合について:
裁判所の判断は、バイク側にも4割の過失があるというもので、被害者に厳しい結果でした。判決によると、バイクの前に3台の車両が右折するため停止していたバスの側方を通過していたため、バイク運転者もバスの側方を通過することができると安易に判断してしまったようです。
バイク側からすると、上手く通り抜けられると思ったのでしょうが、その結果、速度違反のスピードで、長い車体のバスが右折を完了後、その後方に衝突するという事態を招いてしまい、このようなバイク側の安易な判断が事故の発生に相当寄与したと認定されたようです。気をつけたいものです。
逸失利益について:
被害者には右尺骨変形という12級の後遺障害が残ったので、被害者は裁判で、事故によって労働能力が14%したとして約1400万円の逸失利益を主張しました。参考まで、被害者の怪我は、右腕の肘から下の2本の骨(尺骨と橈骨)が骨折するというもので、このうち右腕の尺骨に変形障害が残ったため自賠責保険で12級の後遺障害が認定されました。ただし、相手方が主張するように右腕の骨が変形しても仕事が出来なくなるとは一概にいえません。
そこで、裁判では、実際に変形によって仕事等にどのような影響が生じたかが検討され、その結果、裁判所は上記のように述べて、後遺障害12級の労働能力喪失率とされる14%ではなく、5%の喪失率により被害者の逸失利益を算定しました。