【高齢者の交通事故判例①】高齢者が横断禁止道路を横断中、右側から進行してきた普通貨物自動車と衝突した事故で、高齢者の過失割合が20%とされた事例
(平成29年6月27日大阪地裁判決/出典:交民 50巻3号796頁)
事故の状況
現場は,片側2車線,車道幅員16.6メートルの国道2号線(制限速度は50㎞/hで、歩車道が区別され、中央分離帯の上に高さ0.7メートルの防護柵があった)。
被害者は、前方右側の道路の安全を十分に確認せずに横断を開始し、急ぐことなく、右側も見ずに通行したところ、第2車両通行帯を走行してきた車両の前部に衝突し、転倒した。
車両運転者は、前方に歩行者を認め急ブレーキをかけたが、間に合わなかった。
年齢
80歳(女性)
けが(傷害)
脳挫傷等
入院等の期間
約1週間(その後死亡)
判決のポイント
判決では、車両運転者は、遠方のみに気をとられ前方左右を注視すべき義務を怠った過失があるとして、賠償責任が認められましたが、高齢の被害者にも、横断開始にあたり道路の安全を十分に確認せず、横断歩道や歩道橋によらずに横断が禁止されていた道路を横断した過失があるとされました。
道路交通法では、歩行者は、道路標識等により横断が禁止されている道路を横断してはならないとされているので(同法13条2項)、横断禁止道路を横断した歩行者は、横断が禁止されていない道路を横断した場合より過失は重くなり、本件のケースでは、歩行者の過失は25%~30%になるでしょう。
しかし、歩行者が高齢者だったので、裁判所は、「亡Aは本件事故当時80歳と高齢であり,運動能力や認識能力の低下を考慮して,一定程度,道路交通上の義務が軽減される。」との理由で、その過失を20%と認定しました。
小林のコメント
被害者は、買い物をした後、道路と反対側にある停留所に向かうため、防護柵の隙間を目指して横断を開始したようです。
日頃から近道として利用していたのかもしれませんが、不幸な結果となってしまいました。
高齢者は、若いときとは違い、危険を予見して回避する能力が低下しているので、裁判では交通弱者として扱われ、過失割合も高齢者に有利に減じられます。