【バイク事故判例⑥】バイク走行中、交差点を右折した際、対向直進車と衝突し、股関節の機能障害(後遺障害12級)が残った28歳女性のケース
(平成26年 7月 1日京都地裁判決/出典:自保ジャーナル1934号111頁等)
関係車両
バイク(自家用原動機付自転車)vs普通乗用車
事故の状況
青信号で交差点に進入し交差点を右折しようとした原付バイクが、同じく青信号で交差点に進入してきた直進自動車と衝突した。原付バイクの運転者(被害者)は、原付バイクから投げ出され、路上で転倒した。
けが(傷害)
右大腿骨骨頭脱臼骨折
入院等の期間
①入院約1.5ヶ月(49日)
②通院1年20日(実日数は111日)
後遺障害
右下肢の疼痛・しびれ感(12級)、右股関節の機能障害(12級)により、併合11級
過失の割合
バイク70%、乗用車30%
判決のポイント
①過失割合(過失相殺)
バイクは、交差点に入る手前で対向車線を走行する加害車の存在を認識し得たはずであるとして、加害車両の進行を妨害し漫然と右折を開始したバイクの過失は、直進優先の原則(道交法三七条)に反するとして、バイクの過失を重くみて、過失割合を、バイク7、乗用車3と認定した。
②将来の手術費
被害者は、将来的に、大腿骨骨頭壊死が生じる可能性があることから、人工関節置換術が必要になると主張し、将来の手術費と将来の付添費(入院時の両親いずれかの付添看護費)合計約400万円も請求したが、裁判所は、現時点で手術の蓋然性は具体化しておらず、損害も具体化していないとして、その費用は、後遺障害慰謝料の中で考慮するのが相当であるとして、これを否定した。
③慰謝料(後遺障害分)
被害者は、右股関節の機能障害等の後遺障害により、階段の上り下り、長時間の歩行、同じ姿勢の維持等、日常生活にも支障があり、趣味であったハイキングや登山ができなくなったと認められると述べた上で、又、将来的に大腿骨骨頭壊死や変形性股関節症が生じ、人工関節手術が必要になる可能性があり、定期的に通院して診察及び検査を受ける必要があるほか、仮に手術が必要となった場合には相応の費用を要し、被害者は、このような不安を抱えての生活を余儀なくされていると述べて、520万円の後遺障害慰謝料を認めた。
小林のコメント
裁判所は、将来の人工関節手術費用は損害として認めませんでしたが、代わりに後遺障害慰謝料を手厚く認定しました。後遺障害11級の慰謝料は通常420万円程度なので、2割増しの金額が認定されたことになります。