【バイク事故判例②】バイクで直進中、転回車に衝突され(過失ゼロ)、顔面に醜状障害(後遺障害12級)が残った19歳男性のケース
(令和 2年 2月21日東京地裁判決/出典:自保ジャーナル2073号34頁等)
関係車両
バイク(普通自動二輪車)vs普通乗用車
事故の状況
バイクが片側3車線の第2車線を直進していたところ、転回禁止場所において、加害車が左側の第1車線から転回を開始し、バイクに衝突した。
けが(傷害)
右尺骨茎状突起骨折、左眼窩底骨折、左眼窩吹き抜け骨折、顔面挫滅創、頭部外傷
入院等の期間
①入院14日
②通院約8ヶ月(実日数は98日)
後遺障害
右眉毛上縁~鼻根正中の長さ5センチメートル以上の線状痕はじめ複数の線状痕・顔面正中部の瘢痕(9級16号)、眉毛上―頭頂部しびれ(14級9号)により、併合9級
過失の割合
バイク0%、乗用車100%
判決のポイント
①過失割合(過失相殺)
加害車の転回禁止義務違反等の過失は重いとする一方、被害者の制限速度超過やハンドルやブレーキ操作等の過失を認めるに足りる証拠はないとして、被害者の過失を否定した。
②逸失利益
顔面の醜状が、直ちに労働能力喪失に具体的に影響を生じさせるものとみることはできないとして、醜状障害を理由とする逸失利益は否定。眉毛上―頭頂部のしびれや痛みの神経症状についてのみ、労働能力喪失率5%、労働能力喪失期間10年、高校卒業後の実収入を基礎としつつ賃金センサス高校卒男の年齢別平均賃金も参考にして逸失利益を認定した。
③慰謝料(後遺障害分)
被害者が若年であることや、醜状が顔面という目立つ位置にある事等から、醜状障害が原因対人関係や転職において消極的になったりするなど心理的影響が今後も生じることが想定されることは否めないとし、後遺障害慰謝料を790万円と認定した。
小林のコメント
顔面という目立つ場所の傷痕は男女を問わず心理的影響が多大です。就職や仕事上の影響も否めません。
そのため、被害者側では、醜状も将来の収入に与える影響があるとして逸失利益の主張をしましたが、上記の理由で、醜状障害を理由とする逸失利益は否定されました。
しかし、その一方で、後遺障害9級としては比較的高額な慰謝料が認定されました。因みに、後遺障害9級の慰謝料は通常690万円程度です。