【弁護士コラム】私の武勇伝 -その① 保険会社に乗り込む
示談交渉の代理をしていると、色々な局面で、相手保険会社の担当者に連絡する必要が出てきます。ある件で、
「休業損害を払って貰えない」
と被害者の方が言うので、大手○○損害保険の鈴木さんに電話を掛け、「被害者○○さんの代理人の小林です。休業損害の件ですが」と用件を話そうとしたときのこと、
「申し訳ありません。今ちょっとファイルが手元にありませんので、後でこちらからお掛けします」と言われ、電話を切りました。
ですが1日経っても折り返しがないので、再度こちらから掛け、「休業損害の件で証拠書類をお送りしましたが届いていますか?」 と言うと、今度は、「ちょっとお待ち下さい」と言って、書類を探した後で、
「ファイルが見つからないので、後でこちらからお掛けします」
と又言われ、今度こそは直ぐに折り返しがあるだろうと思い、待つことにしました。が、一向に折り返しがありません。そのうち、「何て失礼な人だろう。もう忘れているに違いない」と確信し、その一週間後に相手保険会社に乗り込みました。
保険会社へ乗り込む
私は保険会社の仕事もしていたので、どんなビルにどんな具合に社員さんがいるか想像がつきます。この保険会社の仕事はしたことがありませんが大体見当がつきます。業界の文化も分かります。なので躊躇なく最寄り駅からタクシーで乗り付け、廊下を歩いていた紳士に、
「○○課の鈴木さんを御願いします」
と言って案内して貰いました。勿論、用向きを聞かれましたが、
「折り返すというので一週間待ちましたが連絡を頂けないので来ました」
と言うと、渋い顔をして呼びに行ってくれました。さて、連れてこられた鈴木さんを見ると、うな垂れて、予想外に老けていたので、可哀想に感じましたが、私も引き返せません。
「いつも電話ばかりで失礼しています。あれからファイルは見つかりましたか?」
と一番言いたかった一言をぶつけました。鈴木さん、「はい」と答え、下を向いてましたが、わざわざクレームを言うために来たわけではありません。早速、肝心の用件を切り出し、
「被害者の○○さんに早く休業損害を支払って下さい。証拠書類をお送りしましたが届いていませんか?」と言うと、「届いています」と言うので、
「払うんですか?払わないんですか?」と詰め寄ると、「はい、お支払いします」と回答。
目的はその場で達成されました。
鈴木さん、まさか私が出向くとは思っていなかったでしょう。無理もありません。被害者の弁護士がわざわざ保険会社に出向くなんて聞いたことがありませんから。でも、こんなに不誠実な対応をされたのは初めてだったので、行った方が早いと即決し、行動しました。