【バイク事故判例㊴】バイク走行中の衝突事故により右大腿骨を骨折する等した事案において、被害者が事故後に訴えた歩行障害は本件事故前に発生した別件事故に起因するとして、因果関係が否定された事例
(令和5年2月28日大阪地裁判決/出典:自保ジャーナル2145号50頁等)
関係車両
バイク(普通自動二輪車)vs中型貨物自動車
事故状況
青信号に従って交差点に進入したバイクが、右方から赤信号を無視して交差点に進入してきた貨物自動車に衝突され、路上に転倒した。
けが(傷害)
右鎖骨遠位端骨折、右大腿骨顆部開放骨折および右大腿挫創
治療期間
約1年4ヶ月
自賠責保険の後遺障害認定
①鎖骨の変形障害について「鎖骨に著しい変形を残すもの」として12級5号
②右膝関節の機能障害について「1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの」として12級7号
③これらを併合した結果、後遺障害等級は併合11級
判決のポイント
①過失割合
裁判所は、バイクは青色の対面信号表示に従い交差点に進入したので、バイク運転者には過失相殺すべき過失は認められないと判断しました(つまりバイクの過失はゼロ)。
②後遺障害の内容・程度
バイク運転者は、事故後、膝の下の感覚がなくなり歩行障害が生じたとして、これらの症状は右腰仙部神経叢障害によるもので、右腰仙部神経叢障害は本件事故によって生じた後遺障害であると主張しました。
しかし、裁判所は、本件の事故時には腰仙部に対する外傷はなく、また、歩行障害は本件事故から3週間強・リハビリ開始から2週間強になって初めて訴えられたこと、さらには、腰部の外傷と腰部症状は本件事故以前の別件事故に起因することを理由に、本件事故により右腰仙部神経叢障害が生じたとは認められないとして、バイク運転者の主張を退けました。
小林のコメント
交通事故被害者の中には、何回も事故に遭う方がいますが、このケースの被害者は、4回目の事故でした。
いずれもバイクやスクーターに乗車中、事故に遭い、2回目と3回目の事故では、いずれも腰部挫傷等の傷害を負い、腰部痛等を訴えていました。
このような経過から、裁判所は本件事故後の歩行障害は、本件事故によるものではなく、本件事故前の別件事故によるものと認定したのでした。
私の経験としても、何度か事故に遭うのはバイクの方に多い印象です。
前回事故の治療が終わった直後に又事故に遭ったようなケースで、後遺症が残った場合には、その後遺症が前回事故によるものか今回の事故によるものか判別が難しい場合もあります。
そのようなケースでは因果関係を慎重に検討した上で後遺障害の申請を行う必要があります。
【2024年12月24日更新】
執筆者:渋谷シエル法律事務所 弁護士小林ゆか