【バイク事故判例㊲】信号待ちで停止中のバイクに後続のタクシーが追突した事故で、タクシー側が債務不存在確認請求訴訟を提起したのに対し、バイク側が反訴を提起して損害賠償金を請求したが、反訴請求が棄却された事例

(令和5年 2月15日東京地裁判決/出典:ウエストロー・ジャパン)

関係車両

バイク(原動機付自転車)、タクシー(普通乗用自動車)

 

事故態様

バイク、タクシーの順でそれぞれ信号待ちで停車していたところ、タクシーのブレーキが緩んでバイクの後部に追突した。

 

けが(傷害)

頚椎捻挫及び腰椎捻挫

 

事故後の経過

バイク運転者(被害者)は事故後、タクシー側(加害者側)の保険会社から治療費の支払いを受けて、整形外科に通院し治療を受けたが、保険会社は事故から1ヶ月後に治療費の支払いを打ち切った。

 

被害者はその後も通院治療を続け、事故から約2ヶ月後に治療を終了し、自賠責保険に後遺障害の申請を行ったが、後遺障害は認定されなかった。その後、加害者側から、債務不存在確認請求訴訟が提起された。

 

裁判の争点

①治療期間

被害者の主張は事故後2ヶ月、加害者の主張は事故後1ヶ月でしたが、裁判所は、概要次のように述べて、治療期間は事故後1ヶ月と認定しました。

 

本件事故はタクシーがクリープ状態による低速走行でバイクに追突し、その衝撃で被害者の首が少し前に動いた程度であったこと、双方車両に損傷がみられなかったことから、被害者が受けた衝撃の程度は軽微であった。事故後の稼働状況等も踏まえると、治療期間としては、遅くとも本件事故後1ヶ月までと認めるのが相当である。

 

②損害額

被害者は、反訴を提起して、事故後2ヶ月間の損害賠償金として、休業損害等合計25万円余りを請求しましたが、裁判所は上記のとおり事故による治療期間を事故後1ヶ月と認定した結果、被害者が請求する損害は、保険会社からの既払い金により填補済みであるとの理由で、請求は棄却されました。

 

小林のコメント

本件では当初、加害者側から被害者を被告として債務(さいむ)不存在(ふそんざい)確認(かくにん)請求訴訟が起こされました。

 

債務不存在確認請求訴訟とは、加害者から、既に支払った以上の賠償金
の支払い義務はないとして、被害者に対し、損害賠償債務が存在しない
ことの確認を求める訴訟類型です。

 

これに対し、被害者は対抗手段として、自ら原告となって損害賠償を求める反訴(はんそ)を提起しました。

 

しかし、反訴請求は棄却となったため、結局、債務不存在確認請求訴訟が認められたのと同じ結果となりました。なお、反訴提起後、債務不存在確認請求訴訟は取り下げられました。

 

近時、加害者側(保険会社側)から債務不存在確認請求訴訟が提起されることが増えています。被害者としては、このような訴訟が起こされた場合は、本件のように、その手続を利用して、自らが賠償を求める反訴を提起することが考えられます。

 

【2024年7月22日更新】
執筆者:渋谷シエル法律事務所 弁護士小林ゆか

 

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