【バイク事故判例⑨】バイクで直進中、路外施設に進入しようとした右折車と衝突し、鎖骨骨折後にCRPS様の難治性疼痛(後遺障害12級)が残った50代男性のケース

(平成25年年7月11日大阪地裁判決/出典:交民 46巻4号895頁等)

関係車両

バイク(大型自動二輪車)vs普通乗用自動車

 

事故の状況

加害車両は、片側二車線道路を進行し、右側にあった路外施設に入ろうとして右折したところ、対向直進中のバイクと衝突した。バイクの走行道路の第1車線上には「出入車注意」、第2車線上には「右折車注意」の看板があった。

 

けが(傷害)

左鎖骨骨折、左第七・八・九肋骨骨折等

 

入院等の期間

①入院 (52日)
②通院約2年10ヶ月(実日数は518日)

 

後遺障害

左鎖骨骨折後の左肩の難治性疼痛(12級)

 

過失の割合

バイク20%、乗用車80%

 

判決のポイント

①過失割合(過失相殺)

乗用車については、対向第二車線の車両が途切れたことで右折できると軽信し、第一車線の状況に十分注意を払わず右折を開始した過失が認められるとし、一方、バイクについては、対向車線から路外施設に向かって右折進入してくる車両の存在は当然に予期すべきで、前方を十分注視していれば回避は十分可能で、また、衝突箇所からみて、衝突時には加害車両はほぼ右折を終わりかけていたとして、双方の過失割合を、乗用車8、バイク2と認定した。

 

②後遺症の程度・逸失利益(労働能力喪失率)

被害者は、左鎖骨骨折後の左肩部に、非常に強いアロディニアを伴う激しい痛みが残り、知覚低下の状態にある。可動域制限も著しく、温度低下が認められる。また、右側足部にもアロディニアを伴った痛みがあり、左肩から上肢にかけて温度低下も見られ、これらの症状はRSDに該当すると主張した。

 

そして、RSDにより肩関節機能が全廃状態にあり、後遺障害は5級相当で、労働能力の79%を喪失したとして、逸失利益約4500万円を請求した。これに対して、裁判所は、骨萎縮などの物理的な廃用性を伴っておらず、類型的にCRPSとされる患者が有する症状の一部を欠いているが、被害者の後遺障害については、症状固定時における労働能力喪失率が12級13号事案(この場合の喪失率は14%)より高く評価されうること、症状永続の蓋然性に疑問があり、就労年限時の労働能力喪失率が14%を大きく下回りうること、この両方を織り込んだ上で、全体を平準化し、就労年限までの全期間について、平均14%の労働能力喪失が生じると述べた。その結果、530万円余りの逸失利益を認定した。
<注>金額は過失相殺前のもの

 

③慰謝料(後遺障害分)

痛みをはじめとした被害者の症状自体は相当に強いもので、就労への現実的な影響も無視できず、少なくとも精神的苦痛は、後遺障害12級相当事案を大きく上回ると述べ、特段の事情による増額を認め、後遺障害慰謝料を400万円と認定した。<注>金額は過失相殺前のもの

 

小林のコメント

後遺障害12級の慰謝料は通常290万円程度です。裁判では、「通常の後遺障害12級相当とされる事案の一般的な金額よりは大きく増額することが相当」と敢えて述べた上で、一般的な金額の何と4割増しの慰謝料を認めました。

 

 

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